桑原研究室では、大きく分けて、特殊な顕微鏡システムを用いた機能性分子の電子・光学特性を追跡する研究と、バイオミメティクスに関する研究を行っています。
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興味がある人はぜひ見学に来てみてください。いつでも歓迎しますので、スタッフに連絡をください。研究室メンバー一覧はこちら。
走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:STM)は、量子力学的トンネル効果を用いることで、鋭い金属先端をナノスケールで走査して、原子や分子を一個ずつ観察することができます。 物理工学科目(精密工学コース)の中でも最も小さな世界を探索していている研究室が私たち桑原研究室です。
さらに私たちは、STMを用いて、原子・分子を観察するだけでは満足せず、可視光やX線などの電磁波を、測定時に同時に組み合わせることにより、ナノレベルでの電子励起、発光分光、振動分光を行います。 私たちが構築したこの新しい複合解析装置は、世界に例を見ない、“ここ”にしかない装置です。研究対象は、さまざまなナノ物質や、機能性有機分子の物理・化学的特性です。 その中でも特に、対掌性(キラリティ)と呼ばれる、3次元物質がその鏡像体と重ならない性質(右手と左手の関係のような)を分子スケールで直接評価することを行っています。 それにより、私たち生物が本質的に持っている機構「ホモキラリティ」(片方の掌性しか許容しない生体の機能)の本質に迫ることができると思っています。 詳しくは研究内容のページもご覧ください。
以上の研究を行っていくためには、これまでに学部の授業で学習してきた知識ももちろん生かせますが、何より新たに学ぶ技術がたくさん必要です。特に、真空装置を扱うためのいろいろな技術を習得する必要があり、 研究室に入ってから実際に装置を使用しながら学んでいきます。そのため、4年生時点でのスタートラインはほぼ一緒です。やる気さえあれば、4年生後半には1人で大型装置を扱って研究ができるようになるでしょう。 さらに、データの解析のためにプログラミングも勉強できます。研究内容の性質上、物理だけでなく化学や生物に興味がある人を特に歓迎しています。
バイオミメティクスグループでは、主にモルフォ蝶の「干渉色ながら虹色でなく、広い角度で青い」光学特性に着目して研究を行っています。また、最近では新たな生物のバイオミメティクス研究にも取り掛かっています。 これらの題材は生物に由来し、一見すると物理工学科目(精密工学コース)とは無関係に思われるかもしれませんが、いずれも根本原理は物理であり、ものづくりも行うので、本科目(コース)で学んだ知識がベースになります。
モルフォ蝶の研究では「ナノの乱雑さ」が鍵となるため、電磁場シミュレーション(FDTD法)を活用した光デバイス設計に始まり、ナノ加工技術(リソグラフィ、ドライエッチング、ナノインプリントなど)による作製、 光学測定やSEM/AFMによる評価など、デバイス設計~評価までの一連の流れを経験できます。設計では、シミュレーション条件を適切に設定し、得られた結果を正しく考察する必要があるため、まずはプログラミングや光学の基礎知識を 習得してもらいます。また、作製プロセスでは現代の先端デバイスにおいて必要不可欠な微細加工技術について学べます。さらに、評価プロセスでは多くの分析機器を扱うため、分析機器に関する理解も深められます。
バイオミメティクスの研究は、生物・物理・化学・情報の垣根が無いことが何よりの特徴なので、物理だけでなく生物や化学に興味がある人も楽しんで研究できると思います。 また、世界は生物の宝庫であり、まだまだ目を付けられていない生物は多数存在するので、「この生物の○○には何か秘密があるのでは?」など疑問やアイデアがあれば、気軽に相談してください。
4年生の4月はじめに研究室配属があります。桑原研の場合には、4月下旬までには研究室内でグループが決定します。前期は、修士の学生の下で、実際に装置を用いた実験技術を学んだり、論文を読んで関連研究の基礎知識について勉強したりします。 そして、7月頃から院試勉強になります。院試後、夏期休暇を経て9月からまた研究を開始しますが、この頃には研究テーマが決まります。後期も引き続き、修士の学生と一緒に実験しつつ、卒論に必要なデータを取得してもらいます。 意欲のある学生であれば、11月くらいには、ある程度1人で装置を扱えるようになるでしょう。またグループによっては、放射光施設SPring-8に滞在して実験をします。1月ごろから卒業論文を執筆して3月上旬に発表、修士学生になります。